20隻の航路

FIREマニュアル

 「4%ルールを正しく理解する」という記事で、4%ルールの研究で”成功”とされるリタイア生活には、避けたいものもあるという話をしました。

 4%ルールで引き出していけば、30年後の成功確率は95%と聞いた時、我々は5%の失敗を除けば残りの95%では夢に描いたリタイア生活をおくれるかような錯覚を抱きがちです。

 しかし、それは錯覚です。この記事ではそれを直感的に理解できるように説明します。

20隻の航路

 100隻の船でやるの面倒だったので(笑)、20隻の航路で説明します。

 1億円の資産を築いた人20人がそれぞれ別のタイミングでリタイアし、4%ルールに従って400万円ずつ引き出していきます(インフレは無いものとします)。30年後に資産の1円でも残っていれば成功とされます。

 下のグラフは20隻の航路(20人のリタイア後の資産推移)を示しています。

 20隻のうち、失敗は赤い線(Aさんとします)の1隻だけです。Aさんは19年目に資産が尽きてしまいました。他の船はすべて資産ゼロにならずに30年が経過している、つまり成功していますから、成功率は95%です。

 なお、グラフは私がモンテカルロシミュレーションで適当に作ったもので、S&P500のデータを使ったものではありません。あしからず。

 Aさんが厳しいリタイア生活に直面したことは明らかですが、他の人はどうでしょうか。Aさん以外は思い通りのリタイア生活を過ごせたのでしょうか?

 Bさんの航路を見てみましょう。

 Bさんは30年後にリタイア時資産の1億円を超える資産を残していますから、最終結果だけを見れば十分に成功といえるでしょう。

 しかし、Bさんの航路を最初から追っていくと、その旅が順風満帆とはほど遠いものだったことがわかります。

 Bさんはリタイア後2年目に大暴落に遭い、さらに3年目も下げ相場が続きます。Bさんの3年目の資産は6468万円にまで下がっていました。まだ航路の10分の1で、27年も残しているのにです!彼の脳裏には、自分がすべての資産を失うイメージが浮かんでいたかもしれません。

 株価の低迷は4年間続き、Bさんの不安な日々は長く続きます。その後株価は回復し、Bさんは危機を脱しますが、恐怖にさいなまれた4年間はトラウマになったかもしれません。

 次にCさんの航路を見てみましょう。

 Cさんのリタイア後の資産は最初の8年間は1億円付近で安定しており、悪くない出だしでした。しかし、9年目に大暴落に遭い、その後も下げ相場が続きます。11年目に資産が5524万円と、半分近くになっていまします。

 その後も大きな上げ相場には恵まれず、Cさんの資産は18年目に2868万円となります。12年残しながら生活費7年分程度の資産しかありません。その後のCさんのリタイア生活は不安や恐怖と隣り合わせだったのではないでしょうか。しかし、最終的にCさんは125万円を残して30年目を迎えるので、”成功”したことになります。

まとめ

 いかがだったでしょうか。お伝えしたかったのは、成功確率は95%といっても、その中には避けたい旅が一定割合含まれているということです。

 誤解のないように断っておきますと、私はFIREを否定しようとしていわけではありません。私自身も目指しているわけで、FIREを目指す人には仲間意識を覚えますし、応援したいです。

 そうではなく、リタイア生活が不快・不安なものにならないように、以下のような準備が重要だと言いたいのです。

  • 資産に余裕を持たせる
  • リタイア後に市況が悪かった場合のプランB(再び働きはじめる、支出のを削る)を用意

 これらの話はまた別の記事でしたいと思います。

 ネガティブな面ばかりを語ってきましたが、当然、上振れするシナリオも考えられます。上の20隻の航路では、11人が30年後に2億円を超える資産を築いています(くどいようですが、上のグラフはS&P500のデータを使ったものではありません。また、数が少な過ぎ、シミュレーションとしては意味のないものです)。

 この記事が皆さんのご参考になれば幸いです。

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