【あなたも誤解している?】4%ルールを正しく理解する

FIREマニュアル

4%ルールとは

 FIREの理論的基礎になっているのが、4%ルールです。

 4%ルールについての研究の中ではトリニティ大学の3人の教授によるトリニティ・スタディが有名ですが、この研究は50代後半以降での標準的リタイアを想定したようなもので、リタイア期間を最大30年間で考えています。つまり、早期リタイアを想定した研究ではありません

 FIREは30代とか40代でのリタイアもありますし、日本人はアメリカ人より寿命が長いので、もっと長期のリタイア期間を想定する必要があるでしょう。

 そこで、ここでは最大60年間のリタイア期間を含んだ研究結果Early Retirement Now というサイトから引用します。

引用元:Early Retirement Now

 表の見方ですが、資産の株式比率を0~100%、期間を30~60年として、引き出し率3~5%で引き出していったとき、資産が尽きなかった割合を示しています。

 株式は米国市場の株価指数であるS&P500インデックスで運用したデータです(1871年~2016年のデータを使ったそうです)。株式以外の資産部分は米国10年債となっています。

 また、インフレ率に合わせて引き出し額を変動する調整をしています。例えば、1年目に1億円の資産の4%を引き出すと400万円ですが、2年目にインフレ率が2%上がったら、2年目に引き出す額は408万円として計算されています(簡単のために年単位で説明しましたが、実際には、もっと細かく月単位でこの調整をやっています)。

 FIREで推奨される資産比率は、株式75%です。この株式比率で4%の引き出し率のところをみると、期間30年で99%、40年で93%、50年で88%、の成功率です。30年なら大丈夫そうですが、40年、50年となると少し心もとないですね。

 注意点として、上記表の確率は投資にかかるコストや税金は考慮されていません。厳密にはそれらを割り引いて考える必要があります。

 低コストのインデックスファンドなら0.1~0.3%程度のコストがかかります。0.2%とすると、4%ルールが3.8%ルールになるということですね(泣)。手数料1%のファンドやロボアドバイザーを使うと、それだけで3%ルールになってしまいます(怒)。

 日本での税金は、ファンドの売却時利益に約20%(正確には20.315%)かかります。元本4000万円、含み益1000万円、評価総額5000万円のファンドを売却すると、利益部分1000万円の20%である200万くらいが税金として取られます。ただし、NISAや確定拠出年金(DC、iDeCo)の枠内での利益には税金がかかりません。

 4%ルールは、ネット上で一人歩きして誤解や拡大解釈が広がっているようです。以下のような話には注意が必要です

成功率は資産が減らない確率を示している?

 残念ながら誤解です上述の研究で成功率としているのは、資産がゼロにならなかった比率です資産が減っている場合もゼロでなければ成功に含んでいます

 つまり、リタイア直後に暴落に遭って、目減りしていく資産に胃がキリキリと痛み、寒空の下に放り出される不安におびえる日々を過ごし、「もう駄目だ!」と絶望した直後の奇跡的な株価の回復のおかげでギリギリ持ち直し、1ドルだけ残してお迎えが来た、というケースも成功としているということです。そう考えるとリタイア時の資産に少しマージンを持たせておきたい気にもなります。

 95%の成功率を船の旅に例えると、100隻の船が港を出航したとして、途中で座礁したり沈没するのは5隻だけで、95隻は目的地に到達するということです。しかしこの「成功」した95隻の中には、旅の途中で船体に穴が開き、沈没の恐怖に船員たちが気が狂いそうになりながら航海を続け、さらに嵐に遭い船体がバラバラになって、しまいには板切れになって波に流され、それでも奇跡的に目的地に到着し、その直後に沈んだ船も含んでいます。(これについてはこちらの記事でより詳細に説明しています。)

 FIREをする人は豪華クルーズの旅を望んでいるわけではないでしょうが、沈没の不安がない旅をしたいですよね。

 我々は半世紀以上の長い船旅に出ようとしています。船の安全性は出航前にしっかり確認しておきたいところです。

 なお、資産を減らしたくない場合についてはこちらの記事で取り上げています。

4%に引き出し率なら一生破綻しない?

 上で引用した表のとおり、リタイア期間が30年を超える超長期になると、破綻率がそれなりに高くなります。30代でFIREするなどリタイア期間が長い人は、4%ルールを絶対視せず引き出し率を少し下げる等の対策が必要かもしれません。

 リタイア期間が30年を超える超長期の人には、3.5%ルールが推奨されるようです。年間支出の28.6倍の資産が必要ということですね。

 この点、 Early Retirement Now からもうひとつチャートを引用します。

 下のチャートはリタイア期間30年と、60年のそれぞれの安全な引き出し率を示したものです。縦軸が安全な引き出し率、横軸がリタイアのタイミングを示しています。資産構成は80%が株式、20%が債権です。

引用元:Early Retirement Now

 リタイア期間60年の安全な引き出し率(赤い線)は、リタイア期間30年(青い線)に対し、全体的に押し下がっています。

 リタイア期間30年(青い線)が4%のラインを下回るのは、1920年代末の大恐慌のときと、1960年代後半くらいです。リタイア期間が30年であれば、たしかに4%ルールでほぼ大丈夫そうです。

 しかし、リタイア期間60年(赤い線)では、たびたび4%を下回っています。リタイア期間が60年では4%ルールは少し心もとなくなります。一方、3.5%を下回ることはリタイア期間60年(赤い線)でも少ないです。

 このようなことから、リタイア期間が30年を超える超長期の人には3.5%ルールが推奨されたりします。

 さらに失敗確率をゼロに限りなく近づけるために、3.25%や3%の引き出し率が言われることがあります。

 4%ルールは、3~4%ルールとでも呼ぶべきかもしれません。これについてはこちらの記事をお読みください。

投資対象は株式でなくてもよい?

 上述の研究では米国株式指数S&P500のデータを使っています。研究に忠実に沿うならS&P500に連動するファンドを使うということになります。ただし、円通貨で暮らす日本人としては、為替リスクがあることも考慮すべきでしょう。

 なお、個人的には、米国だけでなく、もっと広く国際分散した株式インデックスファンドでもおおむね同様の結果になるであろうと考えており、そうしたファンドを使っています。

 一方、投資対象を不動産とした場合に4%ルールを適用してよいかはちょっとよくわかりません。ましてや仮想通貨とかになると全然わかりません。株式であっても、高配当株に集中投資した場合にどの程度うまくいくかはわかりません。

 時折オリジナリティー溢れる奇抜なポートフォリオでFIREしようとしている方を見かけますが、リタイア時にはポートフォリオに組み替えることも検討されたほうがよいかもしれません。

 また、資産の株式の比率として50%を推奨しているケースも多く見受けられます。それはおそらくリタイア期間が30年以下の短い期間を想定したトリニティ・スタディ等の結果に基づくものです。トリニティ・スタディに続くその後の研究によれば、リタイア期間が30年をずっと超える人は株式の比率を高めて75%や80%にすることが推奨されています

日本のインフレ率は低いから6%ルールでも大丈夫?

 「米国のインフレ率が3%程度である一方、日本のインフレ率は1%程度で推移している。米国で4%ルールが成立するのであれば、日本では米国とのインフレ率の差2%を加えて6%の引き出し率でも大丈夫」という意見があります。

 個人的にこれはちょっと楽観的過ぎるかと思います。日本のインフレ率が今後も低水準で推移するかはわかりません。この楽観に基づいて引き出し率を5割も上げ、必要資産を3分の2と見込むのは、あまりに大胆な気がします。

2倍のレバレッジをかければ8%ルールが成立する?

 4%ルールの研究はそんなことを示しているわけではありません!

 非常に危険な拡大解釈です。

 私は、人的資本は大きいが投資額が小さい人(若い会社員等)が、低いレバレッジをかけて投資することに対しては肯定派ですが、それは大きな人的資本の裏付けがあってのことです。

 リタイアしたということは人的資本がゼロということなので、レバレッジをかけるような投資はおすすめできません。

まとめ

 4%ルールを議論するときは、どうしても失敗率の話が中心になりますが、資産が大きく膨らむ可能性もかなりあります(トリニティ・スタディでは、4%ルールで30年後の資産の中央値が8倍!だったそうです)。

 また、日本には公的年金があるため、それを加味すると必要資産は少し少なくできます。さらに、一般には老齢期の支出は若いころより縮小する傾向があります。

 また、一概に若いうちのFIREの方が危険だと言い切ることもできません。4%ルールの成功が怪しくなってきたとき、まだ働ける年齢であれば、再び働き出してある程度リカバーすることも可能だからです。そうした柔軟性は若い人のほうが高いでしょう。

 「引き出し率とか手数料とか税金とか年金とか色々あって、結局年間支出の何倍の資産を作ればいいの?」って感じになるかもしれませんが、リタイア見込み時期まで時間ある人にとっては、資産の目安としてざっくりと25~33倍と考えておけばよいと思います。

 十数年後の資産運用の含み益がいくらかなどわからないし、税率や年金制度だって変更になるかもしれません。遠い未来に対して精度の高い予測は困難なので、リタイアまで時間ある人はおおらかに考えておきましょう。

 リタイアがあと数年というところまで近づいてきたら、そのときに公的年金や税金の見込み額等を加味してより精度の高い計算をしましょう。そして、リタイア後に市況がよくなかった場合に備えたプランBの検討もしておきます。

 そうした話はまた別の記事で詳しく書きたいと思います。

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