4%ルール成功率の前提
「119隻の航路」という記事で、トリニティスタディをはじめとする4%ルールの研究で”成功”とされるリタイア生活には、避けたいものもあるということを説明しました。
4%ルールの研究で30年後の成功率は95%など言うとき、前提とされているのは、退職のタイミングがバラバラなことです。
しかし、これは現実的な前提でしょうか。FIREをする人のリタイアタイミングは、市況がよい上げ相場のときに偏りそうな気がします。
この記事ではその点を検討します。
皆が4%ルールに従ったら
基本的に4%ルールの考え方は、リタイア期間終了後に資産がゼロでなければよいという考え方で設計されています。逃げ切りが目標ということですね。
一方、資産を残すことを目標に考えることもできます。この場合はリタイア期間終了後に資産を一定割合残していることが目標になります。
まず、Early Retirement Nowから引用する次の表を見てみましょう。
各人はバラバラなタイミングで貯蓄率50%で貯蓄をはじめます。年間支出25倍の資産を築くとリタイアします。
縦軸はS&P500指数(対数)、横軸は年月です。赤い点が各人が年間支出25倍の資産を築いてリタイアするタイミングです。

やはりリタイアタイミングは上げ相場に偏っています。
もうひとつ、Early Retirement Nowから引用する次のグラフも見てみましょう。
上下のグラフのうち、上のグラフは先ほどのグラフと同じものです。それと対比される下のグラフは、縦軸が安全な引き出し率、横軸が年月です。赤い点がリタイアするタイミングです。

下のグラフを見ると、安全な引き出し率が低いタイミングでのリタイアが多くなっています。そして、安全な引き出し率が高い、良いタイミングでのリタイアはほとんどありません。
もちろん、現実では誰もが年間支出25倍の資産を築いて即リタイアするわけではありません。しかし、リタイアタイミングは上げ相場に偏る傾向はあるのではないでしょうか。
4%ルールの成功率等をみるとき、これは割り引いて考える必要がありそうです。
FIREのリタイア者が多いタイミングは、リタイアのタイミングとしては相対的に良くないかもしれません。
目下の好調な相場でFIREブームが来ていますが、いまはリタイアのタイミングとしては・・・どうなんでしょうか?
引き出し率3.25%の場合はあまり気にしなくてもよいかも
引き出し率を低く想定している人に対しては朗報があります。
下のグラフはリタイア期間60年のグラフです。縦軸が失敗率、横軸が株式比率です。青が引き出し率4%、赤が引き出し率3.25%で、実線が従来の失敗率、点線が上で考察してきたようなリタイアタイミングでリタイアした場合の失敗率をそれぞれ示しています。

引き出し率4%(青)では点線と実線にそれなりに差があり、やはりリタイアタイミングの偏りの影響があります。
一方、引き出し率3.25%(赤)の株式比率75%付近では点線と実線はほぼ差がありません。つまり、引き出し率3.25%では、推奨される株式比率75%において、リタイアタイミングはほとんど気にしなくてよいということです。

ちょっとほっとしました
この記事が皆さんの参考になれば幸いです。
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