3~4%ルール
「4%ルールを正しく理解する」という記事で、4%ルールは長期のリタイア期間に適用するには不安があり、3.5%や3%の引き出し率が推奨されるという話をしました。
4%ルールがダメというなら、早期リタイア希望者に数字を示すには、結局、何%ルールと提示するのがよいでしょうか?
3%ルールとしてしまえば、ほぼ全ての人が安全な引き出し率になりますが、そんなに資産を築く必要がない人も多く、リタイアをいたずらに遠ざけてしまう恐れがあります。
あいだを取って3.5%ルールとするのは悪くありませんが、帯に短しタスキに長しになるおそれがあります。
4%とか3%とか3.5%とか、ひとつの数字に全ての人を当てはめようとすることに無理があったかもしれません。
一方、「適切な引き出し率は人それぞれです。」というのは正しいですが、目安が何もないのは不親切です。
そこで私が提案したいのが、3~4%ルールとして、引き出し率に範囲を持たせて示すことです。資産としては年間支出の25倍~33倍になります。
個々人が自分の事情を踏まえて以下のような要素を考慮し、引き出し率を3~4%の範囲で調整するというものです。
- リタイア期間
- いざというときに働いていくら稼げるか
- 支出の柔軟性
- 公的年金の受給額見込み
- 資産のうちの含み益の割合(税金)
- あなたのメンタル
- 資産を残したいか
- リタイア時の株価の水準
もちろん、これはすべてのリタイア者向けではありません。リタイア期間が短い人の場合、5%とか6%の引き出し率でも大丈夫だったりしますから。あくまで長期のリタイア期間を想定する早期リタイア者向けです。
さて、上では色々な要素を挙げました。
「要素があり過ぎて必要な資産が計算できん!」という方が多いでしょう。
そんなあなたにおすすめのシミュレータをご紹介しましょう。これを使えば、支出の柔軟性や公的年金、税金等も考慮した精緻なシミュレーションができます。
FIRE出口戦略 最強のシミュレータ
Engaging Data というサイトの Post-Retirement Calculator です。

表記はドルですが、100ドル=1万円とでも脳内変換すればOKです。
成功率は1871年から2019年の株式、債券、現金のリターンデータから計算されます。失敗は赤色で表示されます。緑は成功ですが、濃い順番に、初期資産の5倍以上、初期資産の2倍以上、初期資産以上、初期資産以下を示しています。
主要な入力項目は以下のとおりです。
- Spending/yr:リタイア後の年間支出
- Savings:リタイア時の金融資産
- Retirement Age:リタイア年齢
- Retirement Yrs:リタイア期間年数
- Spending Flex:支出の柔軟性 柔軟性のしきい値を下回った場合に支出を何%に削減するか
- Flex threshold:柔軟性のしきい値 初期資産のインフレ調整後何%になったら支出の削減を行うか
- Stock %:株式%
- Bond %:債券%
- Cash %:現金%
- Avg Tax Rate:平均税率
- Investment Fees:投資手数料(経費率)
- Extra income:年間特別収入(自動でインフレ調整されるようです)
- Extra expense:年間特別支出(自動でインフレ調整されるようです)
特別収入は右欄のStart Age(開始年齢) End Age(終了年齢)で期間を指定します。複数ある場合は「;(セミコロン)」で区切って入力します。特別支出も同様です。
下の画像が40歳から50歳に100万円の年収があり、65歳以降に200万円の年金収入がある場合の入力例です。

なお、「Toggle wedges」の「Death」にチェックを入れると、死亡率がグレーで表示されます。
死亡率が視覚化されることで、資産が尽きるリスクの一方で、人生でやりたいことをやり切れないまま死んでしまうリスクもあることを思い出させてくれます。
ただ、この死亡率は米国人のデータですから、日本人はもっと長生きする傾向があることには注意が必要です。

このシミュレータはあくまで過去のデータを使って計算するものであり、過去は必ずしも未来を保障するものではありませんが、大いに参考になるのではないかと思います。
皆さんのFIREの旅がよいものになりますように!
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